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夜中の2時、スマホが光った。
「子どもが死んだ。葬式代がいる」
添付されていたのは、目を閉じた子どもの写真。眠っているのか、息がないのか、わからない。私は、送金のボタンを押した。
ちょっと、あなたに聞きたい。あなたは、自分だけはだまされないと思っていないか。私も、そう思っていた。
これは、善い人が骨までしゃぶられていく記録だ。始まりは、もっとずっと前。たった5,000円だった。
最初は、たった5,000円だった
高1のとき。「来週、絶対返すから」。友だちに5,000円を渡した。「返して」と言うたび「返す」。それきりだった。(①口だけの約束)
大学1年。深夜のバイト終わり、15歳上の先輩が毎晩のように居酒屋へ連れていってくれた。会計は、いつも先輩。マジでいい人だと思っていた。(②好意の先払い)
先輩はパチンコが好きで、タバコも手放さない人だった。ある日、負けが続いたのか、「ちょっと貸してくれない?」。3万円。あれだけおごってもらっていて、断れるわけがなかった。
しばらくして、先輩は上の社員とぶつかり、ロッカーを叩き壊して辞めた。慌てて電話をかけたが、呼び出し音が鳴り続けるだけ。お金は返ってこなかった。
ちょっと、あなた。あなたにもないだろうか。先におごられて、先に親切にされて、気づいたら断れなくなっていたこと。
先に差し出されると、人は返さずにいられなくなる。あのおごりは、のちの「貸して」を断れなくするための前払いだった。
「貸した金は、あげたと思え」。別の先輩の言葉を胸に、私は大人になった。
そして、インドネシアで
貸すなら、あげるつもりで。そう決めていたのに、海の向こうで、もっと深い穴に落ちた。
Tinderで知り合った女性と、すぐWhatsAppへ。移った途端に夜の誘い。よくある流れだ。断った直後、「子どもが病気なの。薬代を貸して」。あげるつもりで3,000円ほど送った。(③小さな頼み)
彼女はシングルマザー。私も、母ひとりの家で育った。胸がつまった。(④同情)
数日後、あのメッセージが届く。目を閉じた子どもの写真。断れなかった。(⑤罪悪感)
同じ番号から、今度は友だちを名乗る誰か。「彼女が緊急搬送された」。病院のベッドで眠る彼女の写真まで届いた。(⑥第三者)
病院代、食べ物代、Grabの移動代。(⑦理由の洪水)
元気になった彼女は言った。「役所に申請すれば、治療費は戻ってくる」。(⑧戻ってくる話)まとまった額を送った途端、連絡が消えた。
2つ目の番号。「スマホを盗まれて、隣の人のを借りている。もう少し払えば、お金は戻る」。(⑨ゴールを動かす)
3つ目の番号は、男の「エージェント」。彼女と連絡がとれず困っている、本当は半年かかる手続きを手数料で早められる、と。(⑩肩書きを借りる)名前を名乗るボイスメッセージまで届いて、私は信じた。また大きな額を送り、その男も消えた。
WhatsAppでグループを作り、3つの番号を入れた。1つ目と2つ目は入らない。ブロックされていた。
合わせて、10万円近く。
確かめたのは、見せられたものだけ
たぶん、全員グルだった。お金より痛かったのは、身分証も顔写真も確かめたのに、信じたい方を選び続けた自分だった。
確かめたのは、相手が見せてきたものだけ。
人の脳は、話の流れが自然だと、一つひとつの言葉をいちいち疑わない。それっぽい話が並ぶと、話そのものを疑わずに、次の一手を探し始める。
ちょっと、あなた。今、「自分なら途中で気づく」と思わなかったか。その自信こそ、相手がいちばん欲しいものだ。
この10個の手口を、名前のついた形で先に知っておきたいなら、人生のバグが消える最強のチート本7冊のダーク心理学の2冊から読んでほしい。
搾取魔が、あなたを選んだ理由
詐欺師が狙うのは、頭の悪い人じゃない。断ったら冷たい人間になる気がする人。かわいそうな話に、ちゃんと揺れる人だ。あなたが優しいなら、あなたはもう、狙われる側にいる。
人の優しさにつけこんで、金をしぼり取る詐欺師は、絶対にいなくならない。マルチも投資セミナーも、同じ場所を突いてくる。
最近、詐欺撲滅をかかげる登録者100万人超えのYouTuberが、名誉毀損の疑いで逮捕された。名指しされた男性は、動画の翌月に亡くなっている。怒りも同情も、お金に換えられてしまう。弱い者どうしが、奪い、奪われる。
恥ずかしい話、私は今も手口を学び続けているのに、かわいそうな話を聞くとガチで揺れる。経験の授業料は、毎回お金だ。学べば、払う前に心の守りを固められる。
だから、学ぶしかない。優しさを捨てるためじゃない。優しさを、自分で使えるようになるために。
嘘は、外からだけ来るわけじゃない
だまされたと気づけるうちは、まだ浅い。嘘が、外から来ているからだ。
でも、あなたに聞きたい。あなたをいちばんすり減らしているのは、知らない詐欺師だろうか。それとも、毎日顔を合わせる誰かだろうか。
朝、上司の「おはよう」がいつもより低かった。それだけで、昨日送ったメールを読み返す。夜、家族のため息。慌てて、明るい話題を探す。一日の終わりに残っているのは、ぐったりした体と、空っぽの自分。
むしり取っているのは相手でも、差し出しているのは、あなたのほうだ。そうさせている思い込みは、この5つ。
自分から差し出してしまう、5つの思い込み
① みんな、自分を見ている。ある大学の実験で、恥ずかしいTシャツを着て部屋に入った学生は「半分は気づいた」と予想した。実際に気づいたのは約2割。人は、見られている量をだいたい2倍に見積もる。
② あの人の機嫌は、自分がなんとかしなきゃ。優しさのつもりで、やっていることは相手の気持ちのコントロールだ。相手の機嫌は、相手のもの。あなたの担当じゃない。
③ 気づいたら、動かなきゃいけない。気づく力と、全部を背負う義務は、完全に別もの。あなたが今日拾った荷物は、もともと誰のものだったか。
④ 断ったら、嫌われる。実験では、断られた側は、断った側が思うほど気にしていなかった。あなたが三日悩んだ「ごめん」は、相手にとって三秒だったかもしれない。
⑤ 優しくしていれば、大事にされる。線を引かない優しさは、「この人には何をしても大丈夫」と相手に教えてしまう。いちばん尽くした人が、いちばん雑に扱われるのは、そのせいだ。
ちょっと、あなた。あなたがいちばん気をつかってきた相手から、あなたはいちばん大事にされているだろうか。
何十回わかっても、戻る
5つとも、気が弱いからじゃない。見方のクセだ。クセは、気をつけるだけでは消えない。頭の中で回り続けるそのクセを、AIに話して書き出し、形にして見せてくれるのが『Awarefy』。
揺れてしまう心は、弱さじゃない。揺れても流されない心の土台は、学んで作れる。その作り方は『精神的な弱さを改善する方法』にある。
気づく力は、捨てなくていい。向ける先を、あなた自身に戻すだけ。