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日曜の夕方。ソファで、何時間もスマホを眺めていた。何を見ていたのか、もう思い出せない。
ちょっと、あなたに聞きたい。「今、どんな気持ち?」と聞かれて、すぐに答えられるだろうか。
たぶん出てくるのは、「しんどい」「だるい」「ムカつく」。一日の気持ちを、この3つで済ませていないか。
いちばん長く一緒にいるのは自分なのに、その中に何が入っているのか、見当もつかない。
「別に困ってない。もともと、そういう人間なんで」
そう思う人は多い。でも私は、それが冷たさだとも、鈍さだとも思わない。
心理学では、自分の気持ちを見分けたり、言葉にしたりするのが苦手な状態を「失感情症」と呼ぶ。病気の名前ではなく、誰にでもある傾向の強さの話だ。はっきり当てはまる人は、だいたい10人に1人。男性に多いとされている。
気持ちは、生まれつき見えるものじゃない
転んだ小さな子は、泣く前にまず大人の顔を見る。大人があわてれば泣き、笑えば一緒に笑う。人は、まわりの顔に映してもらいながら、自分の気持ちを覚えていく。
だから、映してもらえなかった人は、見分け方を習いそこねる。親がいつも忙しかった。泣けば「男なら泣くな」。怖がれば「弱い」と笑われた。そうやって育つと、許される気持ちが一つだけ残る。怒りだ。
ちょっと、あなた。子どものころ、泣いて許された記憶はあるだろうか。
しかも今は、つらい気持ちが顔を出す前に、スマホで流してしまえる。感じる前に、ごまかせる時代になった。
心理学でいわれる特徴は、この4つ。あなたにも、ひとつは身に覚えがあるはずだ。
① 気持ちに、名前がつけられない
「しんどい」は、気持ちの名前じゃない。中身をくるんだ包み紙だ。
開けてみると、「上司に給料の話をするのが怖い」「欲ばりだと思われるのが恥ずかしい」が出てくる。でも包み紙のままだと、何が自分を止めているのかわからない。わからないまま、「やる気が出ない」とだけ感じる。
「やる気が出ない」も、たぶん包み紙だ。やる気は気合いで出すものじゃない、と言い切る『精神的な弱さを改善する方法』には、その開け方が書いてある。
② 気持ちを、人に言えない
振られた夜、男友だちに「一生ひとりかもしれなくて怖い」と言える人は、まずいない。口から出るのは「あんな女、どうでもいい」。友だちも「お前にはもったいない」と返す。怖さも恥ずかしさも、ひとくくりに怒りへ塗り替えられる。
これが、怒りという傘だ。傘の下では、怖さとさびしさと恥ずかしさが、雨宿りしている。
傘をさしたまま人と向き合うと、話がかみ合わない。友だちの集まりに自分だけ呼ばれなかったとき、「傷ついた」とは言えず、そっけない返事で仕返しをする。相手は理由がわからないまま、離れていく。本当の問題は、一度も口に出されないまま終わる。
③ 外から押されないと、動けない
締め切り。怒鳴る上司。親の「いつまで家にいるの」。外から押されたときだけ、体が動く。
自分の中から湧く「やりたい」が見えないから、外の力を借りるしかない。気づけば、やりたいことまで外から借りている。引っ越したほうがいい。体をしぼったほうがいい。もっと稼いだほうがいい。どれも、本当に欲しいのかはわからないまま。
そして世の中は、そういう人を、いちばん動かしやすい客として見ている。「みんな持っている」「今だけ」。あなたの気持ちの代わりに、その声で財布が開く。
④ 先のことが、想像できない
ちょっと、あなた。「5年後、どうなっていたい?」と聞かれたら、何が浮かぶだろうか。
何も浮かばない。「今の生活は嫌だ」とは言えるのに、どうなりたいかは真っ白。
映画の主人公を思い出してほしい。負けそうな場面で、図書館にこもって理屈を調べる主人公はいない。踏んばらせるのは、いつも気持ちだ。「二度とこんな思いはしない」という悔しさ。気持ちが見えなければ、行きたい先も描けない。
だから毎日が、生きているというより、ただ過ぎていく。
「急に」崩れる人は、いない
「ずっと平気だったのに、ある日急に、何もかも嫌になった」
それは急じゃない。ゴミ箱が半分埋まっても気づかず、あふれた日に初めて気づいただけだ。見えなくても、気持ちは消えない。見えない場所で、少しずつ積もっていく。
海外の研究では、つらい気持ちを細かく言い分けられる人ほど、ストレスの強い日にも酒に逃げにくかった。「しんどい」しか持っていない人は、あふれるまで手の打ちようがない。
このままなら、10年後のあなたも、同じ包み紙を抱えたまま、同じ毎日を過ごしている。
感情は、才能じゃない
ここまで読んで「じゃあ、もう手遅れだ」と思ったなら、それも違う。
気持ちを見分ける力は、生まれ持ったものじゃない。習いそこねた技術だ。技術なら、あとからでも身につけられる。
じっさい、気持ちに名前をつけるだけで、不安や恐怖に反応する脳の場所が落ちつくことが、実験で確かめられている。包み紙を開けて「これは怖さだ」と言えた瞬間、人はやっと、自分を止めていたものと向き合える。
やる気が出ない。自信がない。人前で固まる。どれも、包み紙の中身を知らないまま、自分と戦ってきた結果かもしれない。
その中身を、脳と心のしくみから一つずつほどいてくれるのが『精神的な弱さを改善する方法』。緊張・自信・やる気の正体がわかると、「しんどい」の中に何が入っていたのか、開ける手がかりが見えてくる。
気持ちが消えた人の、行き着く先
気持ちを言えない人は、少しずつ、人の輪から外れていく。本人は「一人のほうが楽だ」と言う。
ちょっと、あなた。それは本当に、あなたの本音だろうか。